2022年11月30日
原発なくそう!九州玄海訴訟原告団・弁護団
当原告団・弁護団も加盟している「脱原発佐賀ネットワーク」は去る2022年11月22日、佐賀県知事選挙に立候補を表明している二名の方々(山口祥義氏、上村泰稔氏)に、玄海原発に関わる県政の方針について公開質問状を提出しました。その回答が同月28日までに両名からありましたので、同月29日に佐賀県庁記者会見室にて記者発表しました。
真摯にご回答を出していただいた山口祥義氏、上村泰稔氏に感謝いたします。
お二人のご回答は、佐賀県民にとって大きな関心事である玄海原発の稼働に関わる重要な県政の方針をうかがい知る貴重な資料です。ここに両名のご回答を掲示して、広く県民の皆様の参考に供します。
以下、質問状と回答を掲載します。
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2022年11月22日
佐賀県知事候補様
脱原発佐賀ネットワーク
玄海 原発対策住民会議
さよなら原発!佐賀連絡会
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
さようなら原発1000万人アクション
佐賀県原発問題対策協議会
原発を考える鳥栖の会
原発なくそう!九州玄海訴訟原告団・弁護団
玄海原発反対!からつ事務所
玄海原発の廃炉問題を考える会
原発と放射能を考える唐津の会
代 表 豊島耕一・野中宏樹
連絡先 野中宏樹
玄海原発県政に関する佐賀県知事候補予定者への公開質問状
佐賀県知事候補様におかれましては、より良い県政に向けた選挙活動の準備でご多忙なことと拝察申し上げます。
さて、佐賀県には現在2基の原子力発電所(九州電力玄海原発3号機、4号機)が稼働しています。2011年のフクシマの過酷原発事故の教訓から、県民生活の安全安心の上で、原発の安全性について県民の関心は極めて高いものがあります。
つきましては、以下のような質問を公開で行います。ご回答を賜りたく、お願い申し上げます。
ご回答送付先
野中宏樹のメールアドレス宛て(別紙記載)、PDF等の形式で。
期限:11月28日(月)18時
記
1.原発に対する基本的な考えについて
2011年のフクシマの惨禍を受けて、原発は即時廃炉ないし段階的に廃炉との国民的な機運が高まりました。しかし最近、ロシアのウクライナ侵攻などに伴うエネルギー問題から、政府は原発の再稼働促進や新規建設まで言及するようになりました。これは玄海原発も無関係のことではありません。
そこで、原発政策に対してどのような基本的考えを持たれていますか?
2.乾式貯蔵施設について
本年3月24日、佐賀県知事は九電に対して玄海原発の乾式貯蔵施設の建設に関して事前了解を発表しました。しかし、乾式貯蔵施設で数十年間保管した後の使用済み核燃料の搬出先に関しては、六カ所再処理工場の稼働見込みが全く立たない状況では、半永久的に佐賀県内に留め置くことになりかねないと懸念されます。核のごみの保管管理は、今後数千世代にもわたることになり、佐賀県民として極めて深刻かつ重大な問題です。しかも原発の運転期間が延びるほど核のごみが増え、重大事故につながるリスクが高まります。
そこで、乾式貯蔵施設の建設に関してどのように考えておられますか?
3.原子力防災計画・原子力防災訓練について
令和4年度の佐賀県原子力防災訓練は本年10月29日(土)に佐賀県、玄海町、唐津市及び伊万里市で極めて小規模に実施されました。これは、新型コロナ感染拡大防止の観点からやむを得ない面もありますが、その実効性が疑われるところも少なくありません。佐賀県の原子力防災計画では、原発事故発生時の風向の把握と風向に応じた避難経路の迅速な変更が盛り込まれていません。これでは、放射性物質が飛散する方向に県民が避難してしまう恐れすらあります。事実、本年の原子力防災訓練で唐津市肥前町京泊地区では玄海原発の風下に避難する結果となり、いわば放射性物質とともに避難する形になりました(添付資料参照)。
県民の安全を確保する上で、どのような原子力防災計画・原子力防災訓練にすべきとお考えでしょうか?
4.プルサーマル発電について
玄海3号機では2009(平成21)年からプルサーマル発電を継続しています。これは、使用済み核燃料から製造したMOX燃料(プルトニウム混合燃料)を用いる方法で、通常のウラン燃料を用いる場合よりも早く原子炉が痛み、制御棒の効き具合も早く悪くなるうえ、万一事故が起きた場合、猛毒のプルトニウムが大量に放出されるという、極めて重大な危険をはらんでいる発電法です。
このようなプルサーマル発電を玄海原発で継続していることについて、どうお考えでしょうか?
5.県民と懇談する場について
現知事は2期8年間の在任期間中で、当会との懇談の場の要望があったにもかかわらず実現した懇談はわずかで、2期目では約15分の1回だけでした。
開かれた県政の一環として、広く県民と懇談する場を設けることについて、お考えを示して下さい。
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【別紙1】
山口祥義氏
■脱原発佐賀ネットワーク (期限:
11月28日 (月)18時)
1 原発に対する基本的な考えについて
2011年のフクシマの惨禍を受けて、原発は即時廃炉ないし段階的に廃炉との国民的な 機運が高まりました。 しかし最近、 ロシアのウクライナ侵攻などに伴うエネルギー問題から、政府は原発の再稼働促進や新規建設まで言及するようになりました。これは玄海原発も無関係のことではありません。
そこで、 原発政策に対してどのような基本的考えを持たれていますか?
〈回答〉
原子力発電については、福島原発事故のことを忘れてはなりません。 風化させてはなりません。
原子力に関わるもの全てが「二度と福島のようなことを起こさない」
という強い気持ちで、常に緊張感をもって取り組んでいかなければなりません。
私は、原子力発電に頼らない、
再生可能エネルギーを中心とした社会を実現できれば、これほど素晴らしいことはないと思っています。
国を挙げて、 原子力発電への依存度を可能な限り低減し、
再生可能エネルギーの導入を進める取組を積極的に行うべきと考えます。
しかしながら、再生可能エネルギーはその安定供給などに課題があり、現時点においては、一定程度、原子力発電に頼らざるを得ない状況です。
また、 玄海原子力発電所においては、 1、2号機の廃炉作業だけでも今後30年以上の長きにわたり関わっていかなければなりません。国や事業者が原子力発電
所を安全に管理し、 廃炉にしていくための人材確保や技術継承をどのように維持していくのか、そうしたことに思いを巡らせることも必要です。
今後とも、県民の安全を何よりも大切に、県も含め全ての関係者の中に気の緩みが生じることがないよう万全を期してまいります。
2 乾式貯蔵施設について
本年3月24日、 佐賀県知事は九電に対して玄海原発の乾式貯蔵施設の建設に関して事
前了解を発表しました。 しかし、乾式貯蔵施設で数十年間保管した後の使用済み核燃料の 搬出先に関しては、六ヶ所再処理工場の稼働見込みが全く立たない状況では、半永久的に
佐賀県内に留め置くことになりかねないと懸念されます。 核のごみの保管管理は、今後数 千世代にもわたることになり、佐賀県民として極めて深刻かつ重大な問題です。しかも原
発の運転期間が延びるほど核のごみが増え、重大事故につながるリスクが高まります。
そこで、乾式貯蔵施設の建設に関してどのように考えておられますか?
〈回答〉
原子力で発生する使用済燃料については、これを「再処理し、回収されるブルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進」
が国の基本的方針です。九州電力は、この方針にしたがって、 使用済燃料を一定期間冷却した後に再処 理工場へ搬出する方針であり、原子力規制委員会も審査の中で確認しています。
核燃料サイクルについては、国と事業者が責任を持って進め、それぞれがきっちりと責任を果たすべきと考えます。
3 原子力防災計画・原子力防災訓練について
令和4年度の佐賀県原子力防災訓練は本年10月29日 (土) に佐賀県、 玄海町、 唐津市 及び伊万里市で極めて小規模に実施されました。
これは、新型コロナ感染拡大防止の観点からやむを得ない面もありますが、 その実効性が疑われるところも少なくありません。 佐賀県の原子力防災計画では、原発事故発生時の風向の把握と風向に応じた避難経路の迅速
な変更が盛り込まれていません。これでは、放射性物質が飛散する方向に県民が避難してしまう恐れすらあります。 事実、本年の原子力防災訓練で唐津市肥前町京泊地区では玄海原発の風下に避難する結果となり、いわば放射性物質とともに避難する形になりました (添付資料参照)。
県民の安全を確保する上で、どのような原子力防災計画・原子力防災訓練にすべきとお
考えでしょうか?
〈回答〉
県地域防災計画のほか、関係市町や医療機関、福祉施設の避難計画など、原子力災害対応の基本となる計画は策定済みであり、原子力災害が発生した場合、これらの計画に沿って、
実際の災害状況に応じた対策をとることとしています。実際の災害時には計画どおりいくとは限らないため、計画を必要以上に絶対視せず、臨機応変の対応が重要です。
そのため、実際の災害の状況に応じて、
副次的な手段も活用しながら、しっかりオペレーションができるよう、普段から習熟しておくことが極めて重要であり、効果的な訓練によって、 より実践的な体制を作り上げていかなければなりません。災害対策はこれで終わりということはなく、より良い地域防災計画や避難計画となるよう不断に見直す必要があると考えます。
4 プルサーマル発電について
玄海3号機では2009 (平成21) 年からプルサーマル発電を継続しています。
これは、使用済み核燃料から製造したMOX燃料 (プルトニウム混合燃料) を用いる方
法で、通常のウラン燃料を用いる場合よりも早く原子炉が痛み、制御棒の効き具合も早く 悪くなるうえ、万一事故が起きた場合、猛毒のプルトニウムが大量に放出されるという、
極めて重大な危険をはらんでいる発電法です。
このようなプルサーマル発電を玄海原発で継続していることについて、どうお考えでし
ょうか?
〈回答〉
エネルギー基本計画においては、「資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、
使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としている」とされており玄海3号機のプルサーマル運転は、この方針に沿う形で実施されていると承知しています。原子力規制委員会では、
新規制基準に基づく玄海3号機の審査において、プルサーマル運転を前提とした審査を実施し、運転が認められています。
5 県民と懇談する場について
現知事は2期8年間の在任期間中で、 当会との懇談の場の要望があったにもかかわらず 実現した懇談はわずかで、 2期目では約15分の1回だけでした。
開かれた県政の一環として、広く県民と懇談する場を設けることについて、お考えを示
して下さい。
〈回答〉
原子力発電については、これまでも、形式にとらわれず広く門戸を開いて県民
や市民団体の皆さんから意見を聞き、全ての質問に回答してきました。
私自身も、市民団体の方々とは節目節目で機会を捉えて直接お会いし、御意見を伺ってきており、
昨年は福島第一原子力発電所の事故から10 年の節目の年ということもあり、市民団体の方と直接お会いし、様々な御意見を伺ったところです。
また、私だけでなく、副知事なども、県民や市民団体の方々から、直接御意見をお聞きする時間を設けて対応しています。
県民からいただいた御意見はしっかりと受け止めており、これからも、様々な意見が出しやすい環境を維持していきたいと考えています。
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【別紙2】
1, 原発は、 福島原発の事故でも明らかなように、
⼈類の英知では、 コントロールできないものです。これを、いつまでも運⽤することは、危険をそのまま放置することです。
原発は廃炉に、そして、太陽光や⾵⼒、⼩⽔⼒、バイオマスなどの再⽣可能エネルギーへの転換を図っていくべきです。
2, 使⽤済み核燃料の保管は、 プールではいっぱいになり、 リ ラッキングして詰め込んで、それでも使⽤済み核燃料があふれるので、今度は、乾式貯蔵施設でというやり ⽅で、安全性は後回しになっています。
⻘森県六ケ所村の最終処分場の運営は⾒通しが⽴ っていません。 陸上での保管になれば、
それだけ危険性は増します。乾式貯蔵施設の建設には反対です。
3, 原⼦⼒ 防災計画、 防災訓練は、 実際の⾏動に合わせたものにすべきです。 今年の防災訓練でも、
実際に、 唐津市から佐賀への避難訓練をした⽅は、 従来以上に時間がかかったと⾔われています。また離島では、 シェルター避難になっており、⼗分な避難ができるとは考えにくいものです。なにより、原発の重⼤事故が起こった場合、 ⾵向きによって、避難経路は違ってくるはずです。そうしたことを無視して、唐津から佐賀へという避難経路だけを想定することには、無理があると考えます。
4, プルサーマル発電は、MOX燃料を使います。通常のウラン燃料よりも危険性が⾼く、原⼦炉を傷つけます。そうした危険な発電を⽼朽化した原発で⾏うことは認められません。 プルサーマル発電は中⽌するべきです。
5, 佐賀県にとって、原発問題は、県⺠の重要な課題です。原発で働く ⼈たちも含めて、安全をどう守っていくのか、関係者のみなさん、県⺠のみなさんの率直なご意⾒をお聞きし、原発に依存しないエネルギー政策へ転換するべきです。県⺠のみなさんの声をしっかりお聞きする場を積極的に設けていきます。