佐賀「3.11」企画のご案内 「玄海原発で緊急事態発生!そのとき住民はどうなる?」
- 2026年03月10日 09:36
佐賀「3.11」企画のご案内
「玄海原発で緊急事態発生!そのとき住民はどうなる?」
玄海原発の最大の特徴は、避難を余儀なくされる30㎞圏内に20近い離島をかかえていることです。
気象条件によっては屋外退避できなかったり、放射性物質の飛散方向そのものが避難先になったりもします。
高齢者は持病をかかえ、薬や介護が常時必要となり、それを支えるスタッフも必要です。
万一、事故が起きたとき、小さな子どもたちの送迎はどうなるというのでしょうか。
今回の講演では、そうした問題点を指摘しながら、1つ1つみなさんと一緒に考えていきましょう。
講 師 上岡直見さん(環境経済研究所代表・元法政大学法学部非常勤講師)
日 時 2026年3月20日(金・祝)14:00~16:00
13:30開場
場 所 アバンセ4F 第一研修室(佐賀市天神3-2-11)
参加費 無料
(主催・問い合わせ先)
原発なくそう!九州玄海訴訟原告団・弁護団
佐賀市中央本町1-10ー3F佐賀中央法律事務所気付
℡0952-25-3121(担当/林田)

今年1月30日、私たち原告側が申請した上岡直見先生の証人尋問が佐賀地裁でおこなわれました。国や九電による反対尋問は、切り崩すには至らず、むしろ法廷の場でより避難が困難であることが明確になりました。その要旨は以下の通りです。
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1、上岡証人尋問とは
いよいよ、訴訟の山場である証拠調手続き(尋問手続)が始まりました。
トップバッターは、原告ら側の申請で、「玄海原発で過酷事故が起きた時に、実効的に避難することができないこと」を立証趣旨として、上岡直見証人に尋問に立っていただきました。
上岡証人には、尋問に先立って、玄海原発で事故が起きた際に避難は実効的にできず住民らは被ばくを避けられないこと、避難計画の実効性はないことについて、2本の意見書(甲B125、甲B205)を書いていただいていました。
その内容を改めて、裁判所に理解してもらうための尋問です。
上岡証人の経歴等は、訴訟に提出した証拠から、以下引用します。
【略歴】
1、1977年 早稲田大学大学院理工学研究科(修士課程)修了
2、1977年~2000年 民間企業に勤務。化学プラントの設計・安全性評価に従事
3、1992年 技術士(化学部門)登録。
4、2000年~2013年 環境自治体会議環境政策研究所主任研究員
5、2002年~2022年 法政大学法学部非常勤講師「環境政策」「都市の環境問題」
6、2013年~現在 環境経済研究所(技術士事務所)代表
【主たる公的活動・委員等(原発関連)】
1、2014年5月20日 参議院国土交通委員会参考人
2、2017年8月~2022年9月 新潟県「新潟県原子力災害時の避難方法に関する検証委員会」委員
3、2022年11月15日 茨城県東海村原子力問題特別委員会参考人
4、2023年4月4日 衆議院国土交通委員会参考人
【主な著書】
・「原発避難計画の検証」(2014年、合同出版)
・「原発避難はできるか」(2020年、緑風出版)
・「原子力防災の虚構」(2024年、緑風出版)
2、主尋問で明らかにしたこと
(1)現状、玄海原発周辺の各自治体には、原子力災害時のための避難計画が(一応)策定されています。国の定める原子力災害対策指針が各自治体に策定を命じているからなのですが、私たちは、避難計画は形ばかり作られたのでは意味が無い、避難計画に実効性がなければいけない、と主張しています。当然のことだと思われるでしょうが、この主張の出発点は、そもそも、原発が、安全を担保された施設ではない、というところにあります。つまり、原発施設は、原子力規制委員会の審査で新規制基準の適合性が認められても、放射性物質の放出の可能性は否定できない、ということらしいのです。これは、原子力規制委員会自身が国会で認めています。
であるなら、原子力災害時の避難計画は、放射性物質の放出があることを前提に、その内容を検討しなければいけないというのが、当然の帰結だと考えます。
そして、避難計画の「実効性」があるというためには、一般公衆の被ばく限度が法的には年1m㏜であることから、周辺住民にこれ以上の被ばくをさせないことが避難計画の実効性の有無の判断に影響すると考えるべきです。
加えて、避難計画を考えるうえでの前提条件というものが重要になるはずであり、複合災害時の原子力災害を想定することが当然に必要です。
(2)これらの点を踏まえ、玄海原発事故における避難計画を検討した場合、住民は被ばくをせず、安全に避難できるのでしょうか。上岡証人の尋問では、玄海原発の過酷事故の場合の避難計画の具体的問題点を示すため、次の項目について尋問をしました。
ア、玄海原発の特殊性、特に、避難経路の交通支障などの問題
玄海原発において、原発事故の危険要因には地震や津波が想定されます。玄海原発周辺では、地震は、30年いないに震度6以上の地震が想定される場所も多数存在していますし、その地震が発生した場合に、原発周辺の道路で通行支障が生じることは能登半島地震の際の記憶も新しいと思います。道路というのは、全国で大差ない技術基準で建造されているため、他地域の状況と変わらない状況が発生するというのは、上岡証人が指摘しました。
また、避難が長距離に及ぶと、燃料切れや、亀裂などによるタイヤのパンクなど想定外のトラブルが多発することも、能登半島地震の経験で明らかです。
イ、ヨウ素剤の配布の問題
ヨウ素剤は、被ばく前24時間に服用することが必要だとされています。しかし、いつ、放射性物質にさらされるのか、プルームがいつ到達するのかの予測と、予測内容の伝達が確実にできる保証はなく、規制庁自らプルームの到達の予測は困難といっています。
ウ、避難弱者の避難の実効性の問題
玄海原発周辺自治体において、避難弱者(要支援者)の把握は限定的にしか、されていません。また、「避難行動要支援者名簿」が作成されているはずですが、この名簿に載っている方を、どのように避難させるのか、車両の手配といった具体的な避難手段は計画されていません。避難のための集合場所に行くのさえ困難です。
また、要支援者はまずは屋内退避が指針に定められていますが、支援者・介助者も一緒に屋内退避をすることになれば、その者たちも避難できずに留まることになります。
エ、段階的避難と屋内避難の実効性の問題
原発から5~30km圏内(UPZ)の住民はまず屋内退避が原則とされ、空間線量や放出状況に応じて移転(避難)することとされています。これは、屋内退避の方が圏外へ避難するよりも被ばくを抑えられるという意図で行われるものですが、しかし、安全に屋内退避ができるのかは不明です。地震で損壊した建物では、屋内退避の効果は限定的ですし、そのような屋内でどのくらいの期間、退避しておけばいいのかも分かりません。
ましてや、玄海原発周辺では、木造の建物や築年数が経っている建物が割合として大きく、安全に屋内退避ができる住民は限定的ともいえます。
オ、スクリーニング・退域時避難検査場の問題
住民が避難をするとき、計画では、退域時避難検査を受けることになっていますが、この計画も机上の空論と言わざるをえません。退域時避難検査は、周辺の空間線量が低い場所で行わないと意味がありませんが、上岡証人の放射性物質の拡散シミュレーションでは退域時検査場の候補とされている場所に放射性物質が拡散する可能性が示されています。
また、退域時検査場に来るであろう車両台数と検査の時間を、簡単に計算すると、最後の車が検査を終えるのに330時間ほどかかることになります。
カ、避難までの被ばくの問題
このように、住民が避難できるまでには様々な場面で被ばくが強制されているような状況であるのは否定できません。その被ばく線量をシミュレーションした結果、年間1m㏜を超える被ばくが生じる場合がありうるということが分かりました。
(3)以上の他にも、上岡証人は、玄海原発における避難計画は、避難シミュレーションにしても、指針の改定を反映していないまま放置されていたりと、他地域と比較しても極めて杜撰だと指摘しました。
そのような杜撰な避難計画のもとで、実効的な避難ができるのか。その答えは自明のように思われます。
3、反対尋問の様子
他方、上岡証人に対しては、被告九州電力が主に反対尋問を行いました。
その内容は、「自治体は、~のような対応をすると定められているが知っていますか」、「計画上は、~のような計画になっていることは知っていますか」、という質問が大半を占めていました。
形式上は計画が整えられているというアピールをする狙いのようでした。
また、年間1m㏜という一般公衆の年間被ばく限度に関して、事故時のような緊急時被ばく状況では適用されないのではという質疑をしていましたが、これは、放射性物質が放出されるような過酷事故では、年間1m㏜以上住民を被ばくさせてもよいのだ、という被告九州電力の立場がよく表れている質問だと思いました。
4、まとめ
住民たちが被ばくせず避難をすることは不可能なこと、避難計画がいかに机上の空論なのか、上岡証人の尋問で明らかにするという目的は、一定達成できたのではないかと考えます。
そして、上岡証人の尋問を行って、たかが電気を作るために、なぜ、ここまで大層な施設を維持しないといけないのか、そんな素朴な疑問に立ち返った一日でした。
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佐賀地裁で傍聴できなかった方、もう一度聞いてみたいという方、この機会に、是非、皆様方には3月20日に開催される上岡直見講演会(上記チラシ参照)にお越しください。
