川内原子力発電所の審査書案の提示・了承に抗議する声明
- 2014年07月17日 10:34
川内原子力発電所の審査書案の提示・了承に抗議する声明
2014年7月16日
「原発なくそう!九州玄海訴訟」 原告団長 長谷川 照
弁護団共同代表 板 井 優
1 原子力規制員会は、本日、定例会合において、九州電力川内原子力発電所1、2号機につき、安全対策が新規制基準に適合しているという審査書案を提示し、了承した。これはつまり、川内原発1、2号機が新規制基準に基づく適合性審査に事実上合格したということであり、同原発は今秋にも再稼働する見通しとなったとの報道もなされている。
しかし、原子力規制委員会による適合性審査には下記のとおり看過できない重大な問題がある。
2 第1に、そもそも新規制基準自体に不備がある。
新規制基準は福島第一原子力発電所事故の原因を究明しきれていない中で策定されたものであり、安全性を担保する保証のないものである。また、同基準では、住民の被ばくを防ぐための立地審査指針が廃止されており、事故が起きた場合に住民の被ばくを防ぐことができない。原子炉自体の構造を変えることなく、附属設備を強化したことのみをもって十分としたことも重大な問題である。
3 第2に、放射性物質が拡散する重大な事故発生の可能性は絶対にゼロにはできないところ、事故発生時に住民を安心・安全に避難させることが必要である。福島第一原発事故では、避難時の混乱から特に要援護者を中心に事故後3月末までに少なくとも50名もの死者が出る被害が出ており(国会事故調報告書)、二度と同じ被害を出さない取組みが必須である。しかし、新規制基準では避難に関する計画は何ら定めていない。そして、原子力規制委員会は「原子力利用の安全確保のための施策を一元的につかさどる」(原子力規制委員会設置法1条)機関であるにもかかわらず、避難計画については責任を持たず、実効性のチェックもしないとしている。現在、各自治体が国の方針に従って避難計画(地域防災計画)を策定しているが、現実を無視した、画餅の計画と言わざるを得ないものとなっている。川内原発周辺の自治体においても、実効性のある避難計画は策定されておらず、とりわけ要援護者の避難については何ら対策がない状況である(2014年6月16日朝日新聞報道によれば、30キロ圏内にある87の病院、153の社会福祉施設のうち、避難計画を策定したのは1つの病院、6つの社会福祉施設だけである。)。責任の所在が曖昧なまま、社会的に最も弱い立場にある要援護者を切り捨てる形での原発再稼働は、許されない。
4 第3に、川内原発では、火山のリスクを十分に考慮していない問題がある。川内原発近辺には姶良カルデラなど複数のカルデラがあり、巨大噴火が起こる可能性を否定できない。仮に巨大噴火が起こり、大規模火砕流が川内原発に到達すれば原発は制御不能となり、2基の原子炉が同時並行的に重大事故を起こす危険がある。原子力規制委員会は「巨大噴火の起こるリスクは極めて低い」「噴火の前兆は把握できる」という九電側の主張をそのまま取り入れ、火山は再稼働に影響しないとの結論を導き出した。しかし、かかる原子力規制委員会の判断方法には多くの火山学者が警鐘を鳴らし、「噴火の事前予測は困難」との意見を出している。原発は万が一にでも事故を発生させてはならない特殊な施設なのであるから、火山のリスクを十分に考慮せずに再稼働を進めることは許されない。
5 以上に述べた他にも、新規制基準でも対策法が示されておらず、実際に福島第一原発でも未解決のままの汚染水問題、配管破断(冷却水喪失)と全交流電源喪失が同時に起こった場合の対策不備など多くの問題がある。
6 本年5月21日に福井地方裁判所で出された大飯原発差止め判決は、人格権は憲法上最高の価値を持つこと、万が一にでも人格権が侵害される具体的危険性がある場合には原発の差止めが認められることは当然であること、そして原発への地震等の想定が楽観的過ぎる見通しの下になされているので、人格権が侵害される具体的危険性が認められるとした。この福井地裁判決は、川内原発における新規制基準に基づく適合性審査、ひいては全国の原発の適合性審査に対しても妥当するものである。先に述べたとおり、川内原発には未だ十分に考慮されていない問題点が多くあるのに、原子力規制委員会及び九州電力は「事故は起こらないはずだ」「事故が起こっても対処できるはずだ」「避難は自治体に委ねておけば自分たちが責任を追及されることもない」ともいうべき「楽観的過ぎる」かつ無責任な見通しの下に再稼働を進めている。
7 私たちは昨年7月8日、川内原発の再稼働申請に対し、強く抗議を申し入れた。今回、私たちは、改めて、国及び九州電力に対し、川内原発の事実上の再稼働承認に強く抗議するとともに、玄海原発及びその他の全国の原発の廃炉を求める。
以上声明する。