原発なくそう!九州玄海訴訟

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ALPS処理汚染水の海洋投棄の中止を求める声明を出しました

  • 2023年08月21日 10:11

 

内閣総理大臣 岸田文雄  

経済産業大臣 西村康稔 様 

環境大臣   西村明宏 様 

東京電力ホールディングス株式会社代表執行役社長 小早川智明 様


ALPS処理汚染水の海洋投棄の中止を求める


2023818 

「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団 

共同代表暫定代行  青柳行信・染谷 孝・中島熙八郎

「原発なくそう!九州玄海訴訟」弁護団

幹 事 長  東 島 浩 幸

840-0825 佐賀市中央本町1―10

                 ニュー寺元ビル3F 佐賀中央法律事務所気付 

                 電話0952253121 

 FAX0952253123

 

福島第一原発事故で発生した汚染水をALPSで処理した水(以下、ALPS処理汚染水という、注1)には依然、トリチウムを始めとする各種の有害な放射性物質が含有されています。しかし、その海洋投棄(政府の言う「海洋放出」、注2)が早ければ今月下旬にも強行されようとしています。

1.本来、福島第一原発事故で発生した汚染水は、東京電力および政府にお いて厳重に管理し、周囲の環境を害さないように処置すべきものです。海洋投棄を回避するための代替案については、大型タンクによる陸上での保管等、各種団体や専門家からすでに複数案出ており、それらと比べて海洋投棄は妥当な対策ではありません。

2.地元の福島県漁連は海洋放出反対の決議を出しています。政府は地元の理解なしには放流しないと従前から明言していましたが、ここに来て「理解が進んでいる」と根拠不明の言説を流布しています。漁業者団体等の理解が得られていない現状で海洋投棄に突き進むことは国民を欺く暴挙です。

3.政府は、IAEAが海洋放出を妥当な方策と認めたと吹聴していますが、実際は、IAEAは海洋投棄の妥当性については「利益と不利益に関連するすべての配慮すべき事項を勘案した上で、海洋投棄の決定を正当化する責任は日本政府にある」と明言しています(つまり、IAEAは本件に関して責任を負わないと言っているのです。注3)。

4.そもそもIAEAは決して科学的な第3者評価機関ではなく、むしろ原発推進の先頭に立っている組織であり、客観性を担保できません。

5.ALPS処理汚染水の海洋放出による人体や生態系への放射線影響がないことは科学的に証明されていません。特にトリチウムの内部被曝による人体影響(注4)について無視しているのは、重大な欠陥です。

6.政府は「ALPS処理汚染水を海水で希釈するので放射能濃度は十分低くなるから安全だ」と言っていますが、それは汚染物質の総量規制原則に反しており、かつての公害企業の規制逃れの手口と全く同じです。しかも、この先数十年以上にわたって発生し続けるALPS処理汚染水を際限なく海洋投棄し続けるという無責任な処理方針は許されません。

7.政府は、「トリチウムは世界各国の核燃料再処理施設や原発からも海洋へ大量に放出されていて、ALPS処理汚染水は量的には少ない」旨を再三PRしています。しかし、そのような大量放出による人や生態系へのリスクは十分に検証されていません。まるで、「赤信号を皆で渡れば怖くない」と言っているかのような欺瞞です。

8.佐賀県に立地する玄海原発もトリチウムを大気や海洋に廃棄していますが、周辺住民の白血病死亡者数の異常な高さとの関連性が疑われています(注5)。ALPS処理汚染水の海洋投棄は佐賀県民にとっても人ごとではありません。

ここに、政府・経済産業省および東京電力によるALPS処理汚染水の海洋投棄方針に強く抗議し、投棄を中止することを強く求めます。

注1: 【ALPS処理汚染水】 政府は「ALPS処理水」と表現することで、有害性がないようなイメージを醸成していますが、十分に浄化されているものではなく、依然、トリチウムなどの放射性物質が含有しているれっきとした汚染水です。ALPSの除去対象となっている放射性物質は62核種に限定されていて、それ以外の核種は除去対象から外されています。しかも、処理対象となっている核種でも、毒性の強いストロンチウム90などがALPS処理後に規制濃度を超えて検出されたことがあります。

注2: 【海洋投棄】 政府は「海洋放出」と言いますが、廃棄物を海洋に放出することはロンドン条約で禁止されている「投棄」に当たります。マイルドな言葉を使うことで危険な本質を曖昧にしようという魂胆が透けて見えます。

注3: 【IAEAレポート】 ALPS処理汚染水の海洋投棄に関するIAEAのレポート*は、その要旨が経産省のサイトに掲載されていますが、都合の良いところだけを明記してあり、「IAEAは責任を負わない」旨の箇所を載せていません。なお、フルレポートのPDFは同じ経産省のサイトからダウンロード出来ます。

* I AEA COMPREHENSIVE REPORT ON THE SAFETY REVIEW OF THE ALPS-TREATED WATER AT THE FUKUSHIMA DAIICHI NUCLEAR POWER STATION (2023)

注4: 【トリチウムの内部被曝による人体影響】 口や呼吸、皮膚を通じて体内に入ったトリチウムの一部は体内の有機物に取り込まれて細胞内に長期間留まり、ベータ線を出し続けて内部被曝をもたらします。特に、DNAに組み込まれたトリチウムの体内残留期間は15年以上と言われ、その間、ヒトの設計図であるDNA分子の破壊を起こし、突然変異や奇形、発がんの原因となります。実際、ヒトの培養細胞でトリチウム含有DNAにより染色体異常が認められており、リスザルにトリチウム水を長期間飲ませた実験では、生まれた雌の子猿の卵細胞形成阻害が認められています(玄海原発差し止め等請求事件 準備書面92)。

注5: 【玄海原発周辺での白血病死亡者数の増加】 玄海町及び近隣地域における白血病死亡者数は、統計学的に有意に増加しており、その原因は玄海原発由来の放射性物質の他に認められません(玄海原発差し止め等請求事件 準備書面23)。

 

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